競馬予想の目的とは?
負けていてもミキリをつけて帰る?健二郎の馬券術の秘密なのか。
「これで10連敗ですね。
言い訳はしません」神様は言い切った。
実はこの中山競馬場に来る3週間前、我々は神様を引き連れて公営・浦和競馬場の、しょぽいパドックにいた。
これも取材であり、この日は「馬読みのスタイル」を見せて欲しいということで、あくまでも形だけの馬読みを披露してもらったのだ。
その日、浦和競馬場は雨、そして前半戦はアラブ戦という馬読み禁止事項にハマるレースばかりこれがTだった。
形だけの馬読みも当然のように5レース連敗だった。
こちらとしては単なる取材ということで気にも留めていなかったのだが、神様にとっては屈辱だったようだ。
「これで10連敗・・」神様に対して慰めるなんてことはしない。
相手はプロだ。
ならば「力を見せてもらわなければ困る!」直接、そう言ったわけではない。
「予定外ですが、明日また来ましょう。
原稿締め切りの都合上、明日が最後となりますからよろしくお願いします」我々が神様に対してかけられる、最大のプレッシャーのつもりだった。
翌8月 日。
前日同様の快晴。
午前9時にパドックに行ってみると、Tはすでに。
指定席に立っていた。
前日と同じに見えるが、どこか昨日とは違う緊張感が漂っている。
ぼくだって緊張している。
昨日5万5000円負けている。
先日の浦和でも3万円負けている。
S編集局長のネタには足元にも及ばないが、自分にとっては精いっぱいの資金だ。
この前後の『フータロー地獄日記』はまだ読ませてもらっていない。
はたして編集局長に2日で200万円損させたときと同じような心境を神様が抱いてくれているだろうか。
パドックでの会話はほとんどなかった。
第1レース。
モニターで返し馬を見ていた我々の前に戻ってきたT健次郎は、新聞の第1レースの馬柱欄いっぱいに3―8と大きく書き、そしてグリ一グリグリグリと、四重丸で囲んだのだった。
1番人気で330円のオッズをつけている。
「ぜ、全財産勝負ですか?」担当の編集Mがちょっと興奮ぎみに聞く。
「全財産勝負というのは文字通りの意味ですよ。
家に帰って家財道具いっさいを売り払ってネタを作ってこなくちゃいけない。
今は無理でしょう」神様は笑っていたが、その場の雰囲気はかなりの緊張感に包まれた。
日記で読み、話を聞いて知っている。
これは絶対的自信の現われだ。
もはや信じるしかない。
この目、ぼくのネタは万札枚と小銭少々。
ちなみに今までに1点勝負でかけた最高額は5万円。
ウイニングチケットが勝ったダービーで、ピワハヤヒデとナリタタイシンの馬連に賭けて外している。
第1レースの未勝利戦。
この目、ぼくは生まれて初めて 万円l点買いをした。
不思議と不安はなかった。
これが馬読みの神様・Tの自信が放つオーラなのかもしれない。
「もう帰る用意しといていいよ」神様は言う。
レースはまったくの不安なく直線で3番と8番が抜け出して、そのまま決まった。
まともなら「儲かった!」と大喜びする場面だ。
しかし興奮はしていたが意外と冷静だった。
勝って当たり前。
生まれて初めての 万円1点勝負なのに、そんな気にさせてくれる。
これがT馬読み術の神髄なのか!『競馬場行き、あのときと同じ片道切符だ』(フータロー馬券日記より)今度こそ負けたら地獄行き、どころか三途の川巧むき・.我々は払い戻しを早々に済ませると、予定通り競馬場をあとにしたのだった。
今日の1レースがすべてです。
浦和で5レース、昨日も5レース(いろいろハンデはあったが外しての1レース)。
これは日記にも書きませんでしたが、私の人生(これから先のことも合めて)がかかっていました。
そう、命より大事なこと。
この1レースが「見えなかった」ら、すべてが終わりでした。
そうでせう。
いくら取材競馬、勝負ではない、錬習試合と言っても、3回負けたら、どんなに信頼している人でも「なんだ」となります(日記は、半分は局長へのレター的なものなので、書けない部分もあります。
もちろん、ほとんど本当のことをストレートに細かく書いていますが。
命賭けた勝負の話となると差し障りもあるし、あまりオドロオドロシイ話は、誤解を招く恐れもありますので・・)。
命賭けて、それを実行、乗り越えるところが凄いところ(テメエで言ってれば世話ないですが、やはり勝負の話、原稿となると書かないわけには行きませんので)と、自画自賛。
人生には負けられない勝負が必ずあると話しましたネ。
今まで数えるほどしかないが、それらはすべてクリアしてきました。
今回も、その今日がそれです。
でも、そんなことは日記には書けません。
終わったあとでも。
(また語るものではないが、第三者的立場になって「勝負学」として、あえてここに書かせてもらいました。
こういうのは日記には書けません。
ご存じのように局長と一緒に勝負しているので、勝てば結果論、負ければ負け惜しみと思われるのがイヤなので。
負けたとき、局長「負けると何もしゃべらない」と、親方、西原に言ったことがありました。
「負けたことは忘れて」と。
私は負けてガツクリして何も話したくないとか、機嫌が悪いなんてことは、これも生まれて一度もありません。
人には「負けてグチるなら、最初から勝負事などやるな」と怒るぐらいです。
また勝負師たるもの、過ぎたことは即忘れるものです。
そのときしゃべらなかったのは、何も解説することがない、すればグチ、負け惜しみになる。
また相手が黙っているときに、負けさせた本人が一人ではしゃげませんものネ。
それと負けたら、私はただのフータロー、何の資格もない。
という気持ちから、おとなしくしていたのです)。
話が横道に逸れてしまったが、その1レースとて、あれがOOで決まったのなら、偉そうなことは言えないし、馬読みとしては(馬券は的中でも)外れなのです。
本当は、発馬前(買う前でも)に説明すればよかったが、時間がなかったのが残念。
一応、自分も買おうと思っていたので)。
1レース、(私の馬読みはOOH×でした。
)の単が200円台。
何であんなものを買うのかネ、買うのは分かるとしても、オッズが低いことがおかしかった。
頭は対抗の馬だった。
だから、それを証明するために「もし抑えるとしたら2―3」と言おうとしたが、それでは勝負レースにならないので、そういう遊びは捨てました。
3着が分かっていながら・・・・・・。
その証拠に、編集者クン(名前、覚えてなくて申し訳ない)が「おめでとう」と言いに来たので「アタマは3でせう」と聞きました。
また「全財産勝負ですか?」と聞いた。
言葉に詰まった。
自信がないからではない。
私の言う全財産勝負とは、シャレや冗談、オーバーではなく、本当に全財産勝負なのです。
少なくとも150万以上ですネ。
もちろん、そんなネタでやってないことは分かっていても、カタギ(なんて言葉を使っちゃったが)さんに全財産勝負なんて言えない。
それとて、勝負として来ているならいいが、雑誌の仕事、取材となれば、やはり持ち金の半分でせう。
でも、馬が見えただけでなく、1番人気でもある。
昨日負けている、浦和の分もある。
それでやっと見えた。
しかも、この日は命賭けていたレース。
流れからしても(精神的にも盛り上がっていた。
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